観光で地方都市を訪れる時、多くの人が最初に行くところは道の駅ではないだろうか。
しかし、この宇摩市にはあたりまえの道の駅が存在しない。道の駅自体は、あるにはあるが、山の中。地元民はわざわざ高速に乗ってまでそんなところに行かない。TVで紹介され人気が出た大福を買うためそこに行き、何時間も並ぶ観光客はいるようだが、それは宇摩市に住む人々の日常ではない。
道の駅に代わって地元の人も通う場所が東洋園芸宇摩支部楽しみ市(以下、東予園芸)である。ここに並ぶ商品の多くは市内で収穫された野菜や果物やそれらを使って調理された総菜、また愛媛に由来のある海産物を使った総菜もある。
私の母が東予園芸に出荷することがあったので、その付き合いで昔から我が家にはそこでもらった果物が豊富にあった。特に柑橘類は切らしたことがない。次から次へと届く品種改良された柑橘が食後の時間を豊かにした。
しかし、今、宇摩市を離れるとその果物の存在がどれほど貴重だったかを痛感している。
日本人は欧州に比べて明らかに果物の摂取量が少ない。欧州の多くの国では、かつての我が家のように、常に果物がテーブルに用意されている。オレンジ、洋ナシ、ブドウ、リンゴ、バナナ、ベリーなど多彩な果物が籠に盛られ、いつでも手に取ることができる。彼らは果物が食生活に潤いを与えるものだと遺伝子レベルで知っている。
私はいつも宇摩市に帰省すると、まず東予園芸に向かう。店員に聞けば、その時期の特に美味しいものを知ることができる。柑橘だけでも目移りするほど商品が並ぶこともある。総菜も同様で、時期によって並ぶものが違うことがある。商品には生産者名と住所が書かれているので、美味しい果物や野菜を見つけた時は、いつもその名前をメモし、その青果が育てられた環境をイメージしながら食すことにしている。
先日、付き合いのある工務店の若社長に頂いた八朔。会長が世話をしたもので、趣味の延長なのだろうが、そのレベルは新橋の瀬戸内館でも食べることはできないほど非常に高かった。
高齢化と少子化をモロに受ける宇摩市ではあるが、未だおそるべき才能を持つ人たちが、いるところにはいるのである。